コーチになるための「理解の5段階」:分かったつもりから腑に落ちるまで
こんにちは、Dr.EKOです。
今日は、なぜトレーニングを「まず自分が体験する」ことが大切なのか、そしてそれがコーチングの質にどう影響するのかについてお話ししたいと思います。
理解から指導までの5つの段階
トレーニングの指導者として成長するには、以下の5つの段階を経る必要があります:
1.知識のインプット(頭での理解...のつもり)
解剖学の知識を読む(でも半分以上は頭に入っていない)
トレーニング理論を学ぶ(けれど、すぐに忘れる)
リスク管理の基礎知識を得る(が、実践では使えない)
「わかった!」と思っているだけで、実は理解は表面的
試験のために暗記しているような状態
書籍を開くのが億劫になる、開くとすぐに眠くなる
2. 実際の体験
自身の体で動きを確認
違和感や心地よさを実感
限界を体感
インプットした知識と実践のギャップに気づく
3. 腑に落ちる瞬間(体での理解に変わる瞬間)
理論と実践が統合される
「なるほど、こういうことか」という深い気づき
体感的な理解の獲得
今まで理解できていなかったことに初めて気づく
4.深い理解と納得
今まで難しかった専門書がスラスラ読める
専門用語が「生きた言葉」として理解できる
文献の内容が実体験と直接結びつく
1段階目で読んで理解できなかった本が、今読むと目から鱗
学会や研修での話が、リアルに理解できる
堂々と質問ができる
実体験と理論が完全に結びつき、立体的な理解に
クライアントへの説明の引き出しが自然と増える
5. 自分の言葉で表現できる(指導ができる段階)
- クライアントに合わせた具体的な説明
- 的確な声掛けとサポート
- 安全で効果的な指導
- 適度な時間の配分
なぜ段階を踏むことが重要か
例えば、「無理のない範囲で運動してください」という指示一つを考えてみましょう。
頭での理解だけの場合:
- 抽象的な指示になりがち
- クライアントの解釈に委ねすぎ
- 危険性の具体的な説明ができない
体験を経た深い理解からの指導例:
「ストレッチの際は、顔をしかめるような強い張りを感じる3歩手前で止めましょう。笑顔で行えるくらいの強度が理想的です。なぜなら、過度の伸張は腱断裂などの重大な怪我につながる可能性があるからです。」
具体的な指導の重要性
よくある抽象的な指示:
- 「適度な強度で」
- 「無理のない範囲で」
- 「心地よく感じる程度に」
体験に基づく具体的な指示:
- 「会話ができる程度の呼吸の速さを維持してください」
- 「手首を返したときに、肘に違和感を感じる手前で止めましょう」
- 「肩甲骨を下に下げるようなイメージで、首に力が入らないように注意してください」
おわりに
トレーニング指導者として成長するためには、単なる知識の蓄積だけでなく、実体験を通じた深い理解が不可欠です。そして最も重要なのは、その理解を安全で効果的な指導として表現できる力です。
まずは自分自身の体験を大切にし、そこから得られた気づきを丁寧に積み重ねていくことが、質の高い指導への近道となります。
そして特筆すべきは、「体操や運動が苦手だから...」という思い込みでコーチを断念する必要は全くないということです。
むしろ、上達するまでの過程で直面する様々な課題は、将来コーチとしての大きな財産となります。その経験が、指導の際の豊富な引き出しとなり、より多くの人に寄り添えるコーチとしての強みになるのです。なので、課題が多ければ多いほど、良いコーチなります。
「苦手」がむしろ強みになると言うことを知っておいていただけたらと思います。