「よかったらどうぞ」から考える、真の選択権とは
「よかったらどうぞ😊」
「よかったらどうぞ😓」
「よかったらどうぞ😡」
この何気ない日常のフレーズ。英語では"IF YOU WANT"と訳されますが、日本での使われ方には、少し異なるニュアンスが潜んでいます。
本当に「選択権」は相手に委ねられているのでしょうか?
日常のシーンから考えてみましょう。コンビニやスーパーのレジで、店員さんがお釣りを手に持って待っている光景。この「待つ」という行為は、実は相手の選択権を制限しているのです。
なぜなら、受け取る側には実際にはいくつもの選択肢があるはずです:
・今すぐ受け取る
・お財布の準備をしてから受け取る
・商品を持っているので、カウンターに置いていただく
・レシートと一緒に受け取る
・支払いカードをしまってから受け取る
しかし、店員さんが手に持って待っている状況では、受け取る側は「急いで受け取らなければ」という無言の圧力を感じてしまいます。結果として、本来あるはずの選択肢が実質的に奪われているのです。
これは、ビジネスにおいても重要な示唆を与えてくれます。
私たち事業者は、無意識のうちに「選択権を制限する文化」を継承していないでしょうか?
例えば、あなたのサービスの売り上げが思わしくない時。本当の意味で「買っても買わなくてもいいですよ」という姿勢を貫けているでしょうか?
ここに、ブランド価値の本質が隠れています。創業300年を超える老舗企業を想像してみてください。彼らは決して、一人のお客様を捕まえて熱心に購入を促すようなことはしません。むしろ、ゆったりとした佇まいで、お客様の選択をお待ちしています。なぜでしょう?
それは、長い歴史の中で培われた確かな価値があるからこそ、真の選択権をお客様に委ねることができるのです。このような姿勢は、一朝一夕には築けません。事業の成長段階において、売上や数字を追いかけることも時には必要かもしれません。しかし、本当に持続可能な事業を目指すのであれば、早い段階から「選んでいただく」という視点を持つことが重要なのです。
この点は、特に対人援助職や、国家資格を持つ医療従事者の皆様にとって、より一層重要な意味を持ちます。なぜなら、私たちには単なるビジネス以上の、人々の健康と生活に関わる重要な社会的責任があるからです。
安易なビジネス手法を模倣することは、長年かけて築き上げてきた専門職としての信頼を損なうリスクがあります。その信頼は、一度失うと取り戻すことが極めて困難なものです。
だからこそ、私たちは常に「選んでいただく」という謙虚な姿勢を持ち続ける必要があります。それは、単なるマーケティング戦略ではなく、専門職としての誇りと責任に基づく行動規範ともいえます。
だから、選ばれるんです。
事業を展開する上で、常に自問自答してください:
・本当に相手に選択権を委ねているか?
・無意識の圧力をかけていないか?
・選択の自由を奪っていないか?
真の「よかったらどうぞ」は、相手の全ての選択肢を受け入れる覚悟から始まります。
そして、より本質的なことがここにあります。
「選ばせる」のではなく「選んでいただく」という姿勢を貫くこと。
これこそが、倫理資本主義の根本なのではないでしょうか。
私たちは相手に選択を強いるのではなく、自然な選択の結果として選んでいただける存在となる。その謙虚さと誠実さが、持続可能な事業の核心となるのです。
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