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会計・税務の準備:専門職としての経験を活かす

はじめに

「税務のことを考えると、頭が痛くなる...」

対人援助や医療の現場で専門性を築いてこられた皆様。私がこれまで数多くの専門職の方々をサポートしてきた中で、このような不安の声を一貫して伺ってきました。

「患者さんやクライアントさんとの関係作りは得意だけど...」

「事務的な手続きってどうすればいいの?」

「会計や税務のことを考えると躊躇してしまう...」

「節税と脱税の違いがよく分からないから、節税が怖い…」

実は私自身も同じ思いを抱えていました。手術室では迷いなく判断できる私たちも、会計や税務となると途端に自信をなくしてしまいますよね。それもそのはず、全くの専門外だからです。

私の場合、最初は「きちんとやらなければ」という思いが強すぎて、全てを完璧にこなそうとしていました。税務の勉強に没頭し、会計ソフトを比較検討し...。でも、そのぶん肝心の対人支援に割ける時間が減ってしまっていました。

ある日、私の恩師が言ってくれた言葉が心に響きました。

「専門性を活かすなら、その道のプロに任せることも大切だよ」

その言葉をきっかけに、長年信頼関係のある税理士の先生に相談してみることにしました。すると、私の中の迷いや不安が、驚くほど軽くなっていったのです。

とはいえ、税理士への丸投げは、最適な選択ではありません。確かに専門家に依頼することは安心ですが、仮に委託しても、何か経営に不具合が生じた際、最終的に事情責任者であるご自身に責任がかかります。

なので、まずは、小規模からスタートし、税理を学ばせてもらう家庭教師の先生のようなイメージで、任せつつも、自分で理解し、管理できるように徐々に理解を深めていきましょう。

こうすることで、税務に対する知識が効率よく身に付きます。将来的にはご自身で全面的に運営される選択肢も十分にありえるでしょうから、是非前向きに取り組んでいきましょう。

この記事では、私のサポート経験から、特に重要度が高く、かつ不安や苦手意識の強かった実務面での準備について、具体的にご説明します。

大切なのは、あなたにとって無理のない方法を選ぶこと。そして、その選択に"正解"や"完璧"を求めすぎないことです。一つ一つは決して難しいものではありません。一緒に整理していきましょう。

1. 活動形態の選択

それぞれの形態には特徴があり、状況に応じて最適な選択が変わってきます。

副業としての開始(年収300万円未満)

【オススメ度:★★★】

未経験者はまずはココから! リスクが少なく、段階的に成長できる最適な選択肢です。

  • 給与所得者の雑収入として申告

    • 確定申告の必要性の判断

    • 職場の副業規定の確認

    • 経費の記録と保管

    • 源泉徴収と所得税の関係

【向いている方】

  • これから副業を始めようとしている方

  • リスクを抑えて段階的に始めたい方

  • 現在の本業を大切にしながら成長を目指す方

  • まずは小規模から経験を積みたい方

個人事業主として始める場合(年収300万円以上)

【オススメ度:★★】

ある程度の実績がある方向け。収支管理の手間は増えますが、本格的な事業展開が可能です。

  • 開業届の提出(所得が雑所得から事業所得へ)

  • 屋号の決定

  • 青色申告の申請

  • 記帳の開始

  • 個人事業税の準備

【向いている方】

  • 安定した収益が見込める方

  • 個人で柔軟に活動したい方

  • シンプルな事業形態を望む方

  • 経費や確定申告の管理が自身で可能な方

法人として始める場合(事業収益が800万円以上、もしくは将来の拡大性が早いと見込める場合)

【オススメ度:★】

事業拡大を見据えた上級者向け。メリットは大きいですが、運営の手間とコストも増加します。

  • 法人設立の手続き

  • 定款の作成

  • 資本金の決定

  • 役員構成の検討

  • 登記申請の準備

【向いている方】

  • 複数の事業展開を予定している方

  • チーム構築や雇用を考えている方

  • 大規模な資金調達を予定している方

  • 社会的信用度を重視する方

  • 将来的な事業承継を考えている方

※活動形態は、収入規模や事業の成長に応じて段階的に変更することができます。多くの方は副業(雑収入)としてスタートし、事業の成長に合わせて個人事業主や法人化を検討していきます。

形態変更のタイミング例

副業→個人事業主

  • 年間収入が300万円を超える見込み

  • 経費が大きくなり、確定申告が複雑化

  • 事業としての体制が整ってきた

個人事業主→法人

  • 年間収入が800万円を超える見込み

  • 従業員の雇用を検討

  • 大型の契約や取引が増加

  • 社会保険加入のメリットが大きい

2. 会計実務の準備

まずは重要な選択!からです。

「税務のことを考えると、頭が痛くなる...」

私たち専門職は、自分の専門分野では完璧を求める傾向があります。だからこそ、会計実務という未知の分野に足を踏み入れることに、大きな不安を感じるのは当然です。

「今から会計士になりたいのかな」

と思わせるほど会計事務に勉強時間を費やす方もいらっしゃいます。 もちろん選択は自由です。将来的には必ず生きてきますから。

しかし、ここでまず、考えたいのは「有限であるあなたの時間と労力をどこに使うべきか」ということです。専門家として、クライアントへの価値提供を最大化することを今一度念頭におきつつ、その観点から、以下の2つの選択肢をご提案します。

①【オススメ度:★★★】 税理士に全面的に依頼する

  • メリット

    • 専門家のサポートで安心

    • 複雑な処理も正確に対応

    • 時間を本業に集中できる

    • 将来の事業拡大にも対応可能

  • デメリット

    • 毎月の顧問料が必要

    • 資料の準備や報告の手間は必要

    • 愛称があう税理士を探す労力

②【オススメ度:★★】 自力で行う

(経理の知識・経験がある方、または頑張りたい方向け)

  • メリット

    • 初期コストを抑えられる

    • 経営感覚が身につく

    • 自分のペースで処理可能

    • 会計ソフト内で完結

  • デメリット

    • 学習時間が必要

    • ミスのリスク

    • 確定申告時期の負担大

    • 事業拡大時の対応に限界

会計ソフトの選定と活用

上記の選択結果によって、選ぶ会計ソフトもその目的が変わって来ます。

①税理士と円滑に連携するためのソフト選び

  • クラウド型で税理士との共有が容易なもの

    • freee(税理士との連携機能が充実)

    • マネーフォワード(操作が直感的)

    • 弥生会計(かつて税理士が第1に選択した老舗)

  • 重視するポイント

    • データ共有のしやすさ

    • 税理士事務所との相性

    • 基本的な入力のしやすさ

②自力で行う場合のソフト選び

  • より詳細な機能が必要

    • 弥生会計(本格的な会計処理が可能)

    • freee(確定申告機能が充実)

    • デスクトップ型(高価)とクラウド型(安価)

  • 重視するポイント

    • 確定申告機能の充実度

    • 経理処理の自動化機能

    • レポート機能の充実度

    • サポート体制

    • 万が一の税務調査に耐えうる証憑

基本的な経理実務の流れ

  • 日々の記録

    • 収入の記録

    • 経費の記録

    • 領収書の保管・デジタル化

  • 月次の処理

    • 収支の確認

    • 帳簿の確認

    • 必要に応じて税理士への報告(依頼している場合)

  • 年次の処理

    • 確定申告の準備

    • 決算書の作成

    • 納税の手続き

3. 税務関連の実務知識

確定申告の準備

- 必要書類の把握と整理

- 経費計上の基準

- 節税対策の基礎

- 申告時期の確認

消費税への対応

- 課税事業者と免税事業者の違い

- 課税売上高の管理

- インボイス制度への対応

- 消費税の計算方法

まとめ

はじめの一歩を踏み出すために

副業・開業における形態選択と会計・税務の準備は、対人援助のプロフェッショナルである私たちにとって、確かに不慣れな分野かもしれません。

しかし、完璧を目指すのではなく、まずは自分に合った形から始めることが重要です。特に会計・財務のことを考えると、頭が痛くなる方は、信頼できる税理士を探すことに注力されたらいかがでしょうか。

私個人の経験をお話しすると、どこまでできるかな、と挑戦する意味で、まずは自力で全てやってみました。しかし、リスク管理が得意な私たちにとって、やはり税務調査や申告漏れ等が気になるポイントでした。そこで私は、昔からお世話になっている税理士の先生に事業のこともお任せすることにしました。今は良好な連携をするための、私たちなりのシステムづくりと必要最小限のアプリを活用しています。

特に重要なポイントをおさらいしましょう:

活動形態は段階的に

  • 年収300万円未満なら副業(雑収入)からスタート

  • 成長に合わせて個人事業主や法人化を検討

会計実務は無理のない範囲で

  • 税理士との協力も一つの選択肢

  • 使いやすい会計ソフトの活用を

税務面は慎重に、でも怖がらずに

  • 適切な記録と申告の習慣づけ

  • 必要に応じて専門家に相談

大切なのは、あなたの専門性を活かした価値提供に集中できる環境づくりです。そのために必要な準備と選択を、この記事が整理する助けになれば幸いです。

次回の記事では...

「契約関係の実務」「日々の運営のポイント」「リスク管理」など、実際の事業運営を具体的にお伝えする予定です。

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